ダイバシーシティヴィム対談シリーズ

橋本大二郎先生と語る持続可能社会(シリーズ3回)

2020年6月3日

第2回「少子社会の動向と地域社会」
ゲスト 島根太郎氏(株式会社東急キッズベースキャンプ 代表取締役)

南間近年、少子化の進行に伴う人口減少が人々を不安にしています。
人口減少社会とは生産年齢人口が減少していく社会です。
同時に、少ない労働人口で多くの高齢者を支える社会であり、これから年金・医療・介護などの社会保障費支出の増大は避けられません。
このような少子化と高齢化が同時に進む中で重要な課題の1つは、夫婦が安心して出産・育児をできる環境整備だと思われます。
その実現のためには行政や社会が一体となって、子育ての課題を解決していくことが喫緊の課題です。
今日は[橋本大二郎先生と語る持続可能社会]の第2回として、少子化の動向と地域社会という視点から、東急キッズベースキャンプの島根太郎社長と対談をお願いします。

(1)少子化の現状について

南間私は1977年生まれ、いわゆる団塊ジュニア世代です。
振り返ってみればかつて、私たちの両親の世代である団塊の世代が生み出された時代は、第一次ベビーブームと呼ばれました。
であれば本来は、団塊の世代を両親に持つ、私たち団塊ジュニア世代による第二次ベビーブームが日本で生まれても良かったはずです。
しかしどういう訳か第二次ベビーブームは起こらずに、第一次ベビーブームをピークとして、 日本の出生率・出生数は下がり続けています。
本来は第二次ベビーブームを生み出すはずの我々団塊ジュニア世代は、子ども作らなくなってきているのです。
その原因は複合的だと思われます。
よく言われることに、団塊ジュニア世代はちょうど就職氷河期にぶつかっていて非正規雇用の割合が高く、経済的な将来への不安から子どもを作らない。
或いはひとつには「男性も女性も仕事をしながら安心して子育てをできる環境」がないことも問題だと思います。
今は共働きも普通ですので、そんな中でも安心して子どもを育てられる環境が、世の中に提供されてないのではないかと、私は常々思っていました。
そういった意味でも今日は、東急キッズベースキャンプの島根社長がご提供されているサービスについてお伺いし、橋本先生のご感想などもお伺いできればと思います。
まず、少子化についての橋本先生のご見解を聞かせて下さい。

橋本私が高知県の知事になりましたのは平成3年(1991年)です。
ちょうど1989年の1月に昭和天皇が亡くなりましたが、その前に111日間の闘病生活というものがありました。
私はその頃NHKの宮内庁の皇室担当をしていたので、当時は毎日のようにテレビに出て昭和天皇の闘病の状況についてお伝えをしていました。
また、平成への御代替わりの時も、今度は平成天皇の即位関連のニュースについてお伝えをするという仕事をしておりました。
そういった仕事をしていましたので、顔と名前がテレビを通じて売れていたこともあったと思うのですが、高知の皆様から「是非、高知県知事選挙に立候補してほしい」という声が上がりました。
私は東京生まれの東京育ちで、高知県とは仕事の面でもプライベートでも、全く縁がありませんでした。
でもそういう声がかかって、そして署名活動の盛り上がりもあり出馬に至りました。
結果的に当選できた大きな理由のひとつはやはり、顔と名前が売れていたということと、
兄が当時、既に自由民主党の将来を嘱望される有力議員であったということなど、そういう面でも色々な期待感が背景にあったのだと思います。
ただ、後になって自分なりに分析して、大きな理由だなと思ったのは人口減少です。

南間橋本先生は1991年に高知県知事になられましたが、その前年に高知県は都道府県単位で最初に人口自然減に突入しました。

橋本つまり生まれてくる赤ちゃんの数が亡くなる方の数よりも少ないという現象が、47都道府県の中で初めて起きたのが1990年の高知県です。
それまでは、高校を出て進学や就職のために県外に出ていく若者が、そのまま戻ってこないという社会移動に伴う人口減少について、高知県民の皆様も「とても寂しいけども時代の流れで仕方がないかな」と思われていたようです。
しかし、そういった社会移動によって若者の県外への流失が続いた結果、生まれてくる赤ちゃんの数が亡くなる方の数を下回ったということに、高知県民の皆様は大きな衝撃を受けました。
今言われる言葉で言えば消滅可能性ということが、まさにその時代から起きたのです。
それで高知の人たちもこれは大変だということになり、高知県に縁のない県外の人でも良いから誰か来てこの流れを変えてほしいとなりました。
それが私を知事に迎えようという大きな追い風になったと思いますので、少子化は私にとって切っても切れない縁がある問題です。
こうして高知県が全国47都道府県で初めて人口自然減になった1990年から15年たって2005年に日本全体が人口自然減になりました。
その流れは2006年にいったん戻りましたけど、その後もまたずっと人口自然減が続いています。
そういったデータを見ていくと、今のままでは少子化の流れを止めるのはなかなか難しいと思います。

南間厚生労働省が今年の6月に発表した人口動態統計によると、2018年に生まれた子どもの数(出生数)は91万8397人で過去最低を更新し、3年連続で100万人を割り込みました。
また、1人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は1.42と、2017年から0.01ポイント下がり、3年連続の低下となっており、晩産化や結婚をしない人が増えている影響が大きいと思われます。
さらに子どもを産んだ女性を年齢別にみると、44歳以下の全ての年齢層で出産が減りました。
30~34歳は1万人以上減り33万4906人となったほか、25~29歳でも約7000人減の23万3754人となっています。
このように今や少子化は国家的課題ですが、地方自治体の創意工夫で流れを変えることはできるのでしょうか。

橋本結論的にはなかなか都道府県単位、市町村単位では出生率や合計特殊出生率などを増やそうとしても困難だと感じました。
現実的にはやはり国の規模で戦略的に取り組まなければ少子化の流れをくい止めるのは難しい。
例えば乳幼児医療費の無料化なども合計特殊出生率を上げる効果はありませんでした。
もちろん福祉的な観点からそういう政策をすることは意味がありますが、出生率を引き上げる効果はなかったということから考えると、では地方という単位ではどうやって出生率の引き上げを実現できるのか。
今まで地方自治体もその時その時で、子育てを応援する企業に何らかの支援をしていくといった創意工夫をしてきましたが、国の単位での少子化の流れは変わりませんでした。
そして全国的に見ても1990年に高知県から初めて始まった都道府県単位の人口自然減という現象は全国に広がり、日本全体の人口も2010年くらいを境に下がり始めてしまいました。
このように全国的に人口自然減になっているという中で、都道府県単位だけでなく国全体として合計特殊出生率をどのように増やすかを議論しなければなりません。
また、私は外国の方を受け入れるということについて、その仕組みづくりは議論しなければなりませんが全面的に賛成なので、そういうことを議論しなければいけない時期に来ていると思います。

(2)東急キッズベースキャンプ設立の経緯と形態

1)設立の経緯

南間島根社長への質問です。
島根社長は民間の学童保育という業態の事業を展開されていますが、その設立の経緯について、今の橋本先生のお話を踏まえて聞かせてください。

島根私は橋本先生のように政治家として何か国に大きな影響を与えよう、或いは県単位で大きな影響を与えようなどということはとてもできません。
ただ、「民間事業者として、社会を変えていく一助になりたい」という想いで事業に臨んでいます。
私が東急キッズベースキャンプを立ち上げた動機の一つは、世の中の空気を変えていくことでした。
基本的に少子化は先進国であれば直面していく問題で、出生率は先進国になればなるほど下がっていきます。
では、そんな少子化社会を変えていくにはどうすれば良いか?
私はまず、子どもを産み育てることが楽しいと思える空気に変えていくことが重要だと思いました。
そういう空気に変えていく一助になる事業を立ち上げたいということが、起業の根幹にありました。

南間島根社長が東急キッズベースキャンプを立ち上げた頃と現在を比べて、世の中の空気は変わったと思いますか。

島根少しずつ変わってきていると思います。
例えば私が起業した頃は、お父様がベビーカーを押している姿は珍しい光景でした。
でも今はたいぶ普通の光景になってきて、さらにベビーカーもステキなものが沢山あります。
そうやって子どもを育てるパパやママがステキだという空気に変わってきていると思います。

南間島根社長は2006年に、新規事業の開発だけを専門にやる企業のインキュベーションとしてキッズベースキャンプを始めたと聞いています。
まず、インキュベーションとは何かから教えて下さい。

島根インキュベーションとは、事業の創出や創業を支援するサービス・活動のことをいいます。
もともとincubationは、卵をかえす「孵化」という意味です。
今南間さんに仰って頂きましたが、私は今から13年前に新規事業の開発だけを専門にやる企業のインキュベーションとして、キッズベースキャンプを始めました。
その企業は若い起業家だけを集めて、その起業家たちのアイデアにより育った事業の中から、社会に役立つ事業を生み出していくようなところで、一言で言うと事業の卵を生み出す企業でした。
そこで提案をして始めたのがキッズベースキャンプになります。
当時、30人くらいのワーキングマザーの皆様にインタビューをする中で確認されたのが、いわゆる「小1の壁」でした。
これは、「保育園には入園できたから母親も仕事を続けられたけど、小学校に上がる時にせっかく続けてきた仕事を諦めなければならない」という問題です。
私は実際にそういうお母様に何人も出会って、この社会問題を解決できるような事業を実現できないだろうかと突き詰めていったことが発想のひとつになりました。
そしてちょうどその頃、私自身がまさに「小1の壁」にぶつかった出来事がありました。
当時小学校1年生だった私の息子が、公立の学童保育に通っていたのですが、ある日突然に学校から抜け出して行方不明になったのです。
当然、連絡を受けた私たち夫婦は真っ青になりました。
息子の行きそうなところを大捜索してもいないし、当然ながら学童保育にもいない。
結局どこにいたかというと、近所のクリーニング屋さんに上がり込んで楽しく過ごしていました。
それで息子に、どうしてこんなことをしたのかと聞いたら、「学校の学童保育はどっちも面白くないから行きたくない」という答えでした。
たしかによく考えてみれば、未就学児と違って小学生になると子どもたちも意思がより強くなり、自分で行動ができてしまいます。
この出来事から私は、「親の考える子育てという視点だけでなく、子どもの視点も大切に考えた放課後の居場所」を作っていきたい、そんな居場所で子どもたちの成長に寄与する事業をやっていきたいと思うようになったのです。
そんな想いからインキュベーションとしてキッズベースキャンプの提案に至ったという経緯です。

2)民間の学童保育と公立の学童保育との違い

南間東急キッズベースキャンプが展開している民間の学童保育と、公立の学童保育はどのように違うのですか。

島根民間事業の学童保育として、公立の学童保育と何が違うのかということについては、公的な支援を全く受けられないということがあります。
私たちは最初からその状態でスタートしていて、それがインキュベーション会社の株主の意向でもありました。
なぜならば、公的な支援を受けると必ず紐付きで様々な制約が付いてきます。
しかしそれでは、マーケットを意識した、利用者のニーズに基づいた画期的な事業内容にすることが難しいだろうという判断があったからです。
そこで「敢えて高価格になることは仕方がない。その代わりに、その付加価値に見合うサービスを構築して提供する」という視点でスタートしたのが民間学童保育になります。

南間内容的にはどのようなサービスを提供しているのですか。

島根簡単に申し上げますと、専用車での送り迎えや、最長22時までのお預かり、また、一般的な公立の学童保育にはない夕食の提供など、サービスの側面があります。
そしてそれらサービス面だけでなく、我々は「社会につながる人間力を育成する」ということをテーマにしています。
具体的には、子どもの放課後の遊びや生活などの様々な体験、或いは夏休みのキャンプをはじめとして、箱の中だけでなく出かけていくことも含めて提供しています。
そういったものも全て合わせて、料金は公立の学童保育の10倍くらいになります。

南間伝え聞くところによると、風邪を引いたお子さんが出た場合、公立の学童保育の場合は37.5度を超えると母親に迎えに来てもらうそうです。
しかしキッズベースキャンプの場合は病院に付き添って行ってくれると聞きました。

島根それは付き添い受診というサービスです。
我々としても基本的には母親にお迎えにお越し頂きたいのですが、実際にはお母様方も直ぐにはお迎えに来られません。
少なくとも1時間くらいはかかってしまうものです。
それならばお母様がお迎えに来られるまでは全力でお預かりしようと考えて、そして受診が必要な場合には我々が診療へのお付き添いをしています。

南間先ほど島根社長から、キッズベースキャンプでは最長22時までお子さんをお預かりするというお話がありました。
その際に残った子どもたちが寂しい思いをしないよう、イベントのようなこともやると聞いています。

島根我々は夜に一番遅くまで残る子どもに寂しい思いをさせてはいけないと考えています。
保育園の場合、お迎えが最後になるとお母さんに「なんでお迎えが遅いの?」と子どもが怒ることがあります。
でもキッズベースキャンプを利用している子どもたちは、帰りの時間が早いと、お迎えに来た母親に怒るんです。
それはキッズコーチが最後まで子どもをとことん楽しませる。最後まで残る子どもたちはキッズコーチを独り占めできる。
夜になればなったでとことん面白い遊びがあるということを、とても意識してやってきています。
特に金曜日の夜は、翌日に学校がお休みのところが多いので、夕食にお好み焼きパーティーをしたり、銭湯に行ったり色々なイベントをしています。
そのため保護者の方にも「慌ててお迎えにこなくても大丈夫です」と、余裕を持ってお迎えに来ていただけています。

南間送迎サービスも充実しているとのことで、学校からの送迎ということだけではなくて、習い事への送迎もオプションで提供されていると聞いています。

島根もちろん子どもの自立との関係があるので、一人で習い事に行けるようになるのが望ましいとは思います。
しかし一方で、どうしても平日に習い事をさせたいというニーズがあります。
ご夫婦共々働いていると本当に時間が少ないので、土・日は家族で過ごせる貴重な時間になります。
それなのに土・日を習い事でいっぱいにしてしまうと、家族の時間が少なくなってしまうのです。
そういう意味で、平日にいくつか習い事をさせたいというニーズがあり、その送り迎えをしています。
特に小学校の新一年生の場合は保育園を卒業したばかりなので、慣れないうちは送り迎えをしてほしいというニーズが多く、短時間でご提供しています。

南間キッズベースキャンプでは会員としての形態もフレキシブルに変えられると聞きました。

島根会員としての形態はレギュラー会員だけでなく、週1日の会員であったり、スポット会員であったり、変更にもフレキシブルに対応させて頂いています。
また、毎月変更ができるので、その時に必要なニーズに合わせてお子様をお預けになることができます。
或いは預けるニーズがない場合でも、純粋に教育のためにとお子様を預ける、イベントの日だけ預ける、キャンプの日だけ、ドッジボール大会の日だけ預けるというようにご利用するご家庭もあります。
このように親のニーズ、子どものニーズ、様々なニーズに合わせてご利用して頂くことができるので、このようなところも公立の学童保育と民間学童保育の違いになります。

3)資金的な裏付けについて

橋本色々と画期的なサービスを提供していて素晴らしいと思いますが、資金的な裏付けはどのような形態でやられているのでしょうか。
公的支援は利用しないとなると、それぞれの地域で立ち上げる時に、それぞれの地域によって異なるやり方をしているのでしょうか。
現在はクラウドファンディングなどのシステムも一般化していますし、色々な資金調達の方法があり得ます。

島根私たちの事業の母体はもともとインキュベーションの会社でしたので、キッズベースキャンプという事業をある程度成長させたら、どこかの企業に売却をすることが最初から前提になっていました。
そのため、この事業を開始して直ぐに市場のニーズがあることが見えましたので、売り先を私たち自身で探しておりました。
その際に私たちが気をつけていたのは、投資リターンを第一に要求する株主に売られてしまう事でした。
私自身、この事業は社会的な事業だと考えていますので、そうなってしまうと継続していくことが難しいと思っていました。
そんな中、たまたま東急グループと縁があり売却に至りました。
この売却は東急グループからすれば沿線価値の向上というメリットがあります。
東急電鉄沿線に若年層が引っ越してきて住み続けてくれれば、沿線で事業を展開している東急グループの企業群にとってシナジー効果が発揮されていきます。
我々のキッズベースキャンプという事業も、そういった企業群のひとつとして、実際の貢献を期待されての東急グループ入りでした。
そこで先程の橋本先生からのご質問になりますが、私たち東急キッズベースキャンプが事業を展開するための初期投資に関しましては、親会社が資金的にバックアップしてくれています。
また、弊社は民間学童からスタートしていますが、児童福祉の分野にも進出したいとずっと考えておりました。
そんな中、2013年に港区から公的な学童保育や児童館の委託事業のお話があり、弊社が受託運営をしています。

4)キッズコーチを憧れの職業へ

橋本キッズベースキャンプのそれぞれの店舗で子どもの面倒を見る支援員については、どのような形態になっているのですか。
昨今では、地域で様々な能力を持った人たちが集まって、子ども達の面倒をみるという試みもあります。
東急キッズベースキャンプではその資格なり、或いはそういった資格とは関係なく色々な募集をしているのですか。
そういったところはどのような形態でやられているのですか。

島根もともとこの業界は資格も研修も何もありませんでした。
正社員としての職もない、継続して勤め人になる人もいないという業界だったんです。
そこで私たちは、キッズコーチという職業を設定し、そしてキッズコーチを憧れの職業にしようということを創業時からの社是として掲げました。
キッズコーチのメソッドはティーチング(教える)ではなく、その対極にあるコーチング(子どもの良さを引き出していくコミュニケーション)を主体としています。
このキッズコーチという名称ですが、例えば足つぼがリフレクソロジーという名称に変わると急にイメージが変わるように、若い人たちに「こういう職業で働いてみたいな」と思わせる名称にというところから始めました。
そして実際の研修制度も弊社で開発をしていきました。
その過程で専門学校と組んで、ある時期から専門学校の生徒に、卒業時に資格を付与する民間資格を作りました。
そしてその民間資格をより公共性が高いものにしていきたいということで、一般社団法人キッズコーチ協会という別団体を作りました。
このキッズコーチ協会では、競合他社であっても、個人の方でも、企業の方でも、どなたでも受けられる態様での人材育成事業も始めています。
現在は2015年から公的な資格で放課後児童支援員という、国の研修を受けると資格が付与されるという制度ができました。
そのためキッズコーチ協会でも、この制度について都道府県から委託を受けて研修をするということをやらせて頂いております。

南間島根社長がキッズコーチという職種について大切にしていることは何ですか。

島根キッズコーチについて我々が最も大切にしておりますのは人材の質そのものです。
キッズコーチの応募倍率は創業時が20倍でしたが、今では60倍という高倍率になっています。
橋本先生が先ほど言われたように、昨今では地域の方を活用するという旗を掲げて放課後の子ども達を支援する事業を、先駆的にされている団体もございます。
一方で我々としてはまず優秀な人材を集めていって、社員として長期雇用していって、プロとして育てていくということを方針にしています。
それと同時に公的な学童保育は特にそういう要素がありますが、非常勤のスタッフさんや、短時間でも働いてくれる方、或いは地域のシニアの方とか主婦層とか、学生さんで将来こういった仕事をしたいという方々を、バランスよく活用していくということもやらせて頂いております。

南間キッズコーチ協会の研修は、学校の先生や、大学で児童心理学を目指している方など、色々な方が受けていると聞いています。

島根キッズコーチ協会の研修については本当に色々な方が受講しています。
最初の入り口であるキッズコーチ検定3級については、将来的に子どもに関わる仕事に就きたいと考えている学生さんや、子育て中の方、お子様連れのお客様を対応することが多い商業施設のスタッフの方など幅広く、また、現在非常勤で子どもに関わる現場でのお仕事をしていらっしゃる方なども受講されています。
或いは、純粋にこの資格に興味を持って受講してくださる方もかなりいます。

  1. (3)自分軸・社会軸、それを分化して12の知恵

南間次の質問はキッズベースキャンプαについての質問です。
キッズベースキャンプでは「自分軸と社会軸を分化した12の知恵」を大切にしていると聞いています。
さて、私自身の話になって恐縮なのですが、私は幼い頃から随分と学習塾に通いました。
そこでは当然のことながら学力を高めようとしてきましたし、そもそも学習塾はそういう場所だと認識しています。
一方でキッズベースキャンプでは、12の知恵に象徴されるように、子どもたちの人間力を育もうとされています。
また、今までの島根社長のお話で、お子様が行方不明になり近所のクリーニング屋さんで過ごしていたという出来事から、「子ども目線を大切にした居場所を作りたいと思った」という起業に至るエピソードがありました。
それらを踏まえた上で、キッズベースキャンプαについて島根社長にお伺いします。
キッズベースキャンプαではプログラミングについても体験するとのことです。
これは子どもたちの学力ではなく、知力や能力へのアプローチなのでしょうか。
子どもたちを育む12の知恵・人間力・学力・知力・能力。
島根社長はそれらをどのように考えるかも含めて教えてください。

島根私たちキッズベースキャンプでは、子どもたちを育む「自分軸・社会軸を分化した12の知恵」を大切にしています。
具体的には「自分軸」として
(1)自分を知る・自律と計画
(2)生活技術と自信・自発・自立
(3)学習習慣・知的好奇心
(4)創造性と集中力
(5)危険回避能力・判断力
(6)論理的思考(筋を通す)
「社会軸」として
(7)礼儀・道徳・規律
(8)共感・思いやり・公共心
(9)コミュニケーション力(傾聴・自己表現)
(10)人間関係形成能力・バランス感覚
(11)社会を知る・世界を知る
(12)情報編集力
という「12個の知恵」です。

南間学校や学習塾で行われている、いわゆる授業とは、全く違う立脚点から発想しているため、目指している子ども達へのアプローチも全く違うように感じます。

島根学校教育や学習塾の授業で行われているのは認知力を高める教育になります。
それに対して私たちは非認知能力を高める教育も、子どもたちが大人になり社会に出る時には必要だと考えています。
非認知能力を高める教育とは、端的に言うならば正解が一つではないという教育です。
これからの時代はAIも発達していきますし、知識をインプットして、テストの時間に短時間でアウトプットする能力、いわゆる情報処理能力が高い人間は、ある意味それほど必要でなくなってくるでしょう。
しかし人間性だけはAIでは置き換えられません。
私たちはそういった人間力を鍛えるということが、放課後の遊びや生活、そして、様々な子どもたちや異年齢の人たちと、揉まれる中で培われていくと考えています。
そのことを裏側で設計して子どもたちには楽しんでもらう。
楽しんでもらいながらいつの間にか身についていく。
そういったことを事業として追及していくことが、私たちキッズベースキャンプの基本です。
そしてキッズベースキャンプαは、このキッズベースキャンプの基本方針に、当社オリジナルの「まなびプログラム」が加わっています。
私は学校教育の中でも一部やって良いと思いますが、スピーチやプレゼンテーションなどのリアルなコミュニケーションの技術までを教えていくというのが「まなびプログラム」です。
それを子どもたちに実践していってもらうという形態になっています。
具体的には、小学校の低学年の子どもたちがディベートをする。
一年間の集大成として、大きな会場で自分の主張をするためのプレゼンテーションもやっています。
キッズベースキャンプαでは、子どもたちがそういったことを継続的に経験していく中で身につけています。

(4)公的な教育の在り方

1)土佐の教育改革

南間次は教育現場の在り方についての質問です。
私は先日、たまたま、戦後日本の教育界はどのような議論をしてきたのかについての本を読みました。
その中で1960年代初頭くらいの議論がとても印象に残りました。
内容的には、ちょうどその頃に日本の資本主義が発展していくに従い、産業が要請する人材を育てようという圧力が教育現場にかかってきた。
しかしそのことに違和感を唱える学校の教師や教育学者たちがいました。
「教育とは、国家的な要請や、産業社会の要請に応えるためにあるのではなく、もっと人間として本質的なヒューマニズムに立脚したものでなければならない」という立場です。
そういった論文を、今、2019年の令和の時代に読んでみると、「そうは言っても現代はサイバーテロもあるし、テクノロジーに強い人材を育てる必要がある。当然だけど、教育現場はテクノロジーの発達に対応できる人材を育てなければならないはずだ」という感想を個人的には持ちました。
さて、橋本先生への質問なのですが、橋本先生は高知県知事の頃に様々な先進的な改革をされています。
その中に土佐の教育改革や情報維新がありました。
当時、インターネットというものがこれから社会に登場していく、その黎明期を迎えようという時代に、橋本先生は「インターネットを使いこなしている教師が、子どもたちとの授業でその一端でも披露してもらって、子どもたちに興味を持ってもらうことも大事だ」「そうしてコンピューターに強い人材を将来的に育てていかなければならない」というお話をされています。
そこで橋本先生にお伺いしたいのですが、それは考えようによっては教育現場への産業社会からの圧力かも知れないですし、やはり教育はどうあるべきかという様々な立場の人々からの議論があったのでしょうか。

橋本それは、もう、非常に多岐にわたる議論がありましたので、例を挙げるとかえって分かり難くなってしまうほどです。
ただ、当時の高知県の教育について話すと、もちろん偏差値が全てだというつもりはないのですが、学力的には弱い状況でした。
いわゆる「私高公低」といわれ、土佐高等学校、土佐塾高等学校、高知学芸高等学校の私立中高一貫3校が非常に学力的にも抜きんでていて、この3校は当時、圧倒的に東大や有名私大への進学率がありました。
一方で公立の高校は、軒並み公平平等の原則の下に全体が沈み込むという状況にあったのです。
もちろん公平平等な教育は当然必要なのですけども、それで全体が落ち込んだのでは、逆に公立にしか行かれないお子さんへの、公平な機会を奪ってしまうことになりはしないはしないでしょうか。
そこで、公立の学費しか支払えないご家庭であっても、お子さんが勉強に取り組んでいけば、公立のトップの高校から東京大学や有名私学などに進学できるチャンスを作るべきではないかと模索をしていきました。
ただ、これは東京都でも話題になりましたが、高知県でも学区制の問題はありました。
高知県でも西に住んでいるご家庭のお子さんは西の高校にしか行かれない。
中央にあって教育力の高い高校とされている、高知追手前高等学校には行かれないという状況がありました。
そのため高知追手前高等学校の学区を外して、まず高知県内のどこからでも受験できるようにしました。
そのようにして様々に改革を進めていきましたが、様々な立場の方々からの色々な議論があり、純粋に教育についてのみの改革を進めていくのは難しかったです。
教育の全体を変えていくのは非常に難しいというのは感じました。

南間お話を聞いていると、公的な分野を改革することは、民間の事業を展開することとは全く違うと感じます。

橋本土佐の教育改革について言えば、まず様々な労働組合・教育団体が関わっていましたし、そこに保護者を加え、しかも年代層で言えば保育や幼稚まで含め、色々なもの凄い数の関係者との調整が必要でした。
そういったことがありますので、民間の事業では株主のご理解を得て立ち上げて、マーケットを定めてマーケティングをして経営していきますが、公的なものの場合はそうはいかないというところがあります。

2)教師に変わってもらう改革が必要

南間橋本先生が知事になられた後、高知県内のあちこちに行かれて色々な方と話した時に、ハードの要望は「道路をつくってくれ」でしたが、ソフト面での要望は圧倒的に「教育」だったと聞いています。

橋本当時、教育に対する不満は千差万別で、一言で言うと呉越同舟ともいえるものでした。
当時の高知県の学力状況は今申し上げた通りですが、しかし一方で、高知県は自然が多いのだから、そういう良さを活かして、もっとのんびりとした教育をしてほしいという方々も沢山いました。
そういった中で、学力を追求した教育を求める方々もゆとりを考える教育を求める方々も含めて、どういう立場の方々からも強く出たのが、教師の資質や教える力についての不満でした。
そこでやはり教育改革としては、教師に変わって頂くことも必要だということが見えてきました。

南間橋本先生は土佐の教育改革として、授業評価や開かれた学校づくり等とともに、教師の長期社会体験研修も打ち出されました。

橋本学校の教師という方々は、自分自身が小学校から大学まで学校という中で育って、大学を出た途端にまた教師として学校に入ってきます。
そのようにして学校という箱物の中で育っていく。
しかも大学を卒業した途端に先生と呼ばれる唯一の仕事であり、ほぼ一人前として扱われる。
一般の企業であれ役所であれ、大学を卒業した途端に先生と呼ばれて一人前に扱われる仕事はありません。
ですからまさに教師自身の社会とのつながりとか、自立だとか、仕事への意欲とか、そういったものに高知県民自身が不満を持っていたという状況がありました。
そこで、これはもう世の中での社会経験がある人が教員にならない限りどうにもならないだろうということで、教師になったら1・2年とは言わないまでも、少なくとも半年間、民間の職場を体験して頂くということを致しました。

3)学校選択制について

島根先程の橋本先生のお話の中に、もしかすると学校選択制のようなものも含まれていましたでしょうか。

橋本学校選択制までは実現できないですね。
私が高知県知事だった時期は、高知追手前高等学校を唯一の学区を外す学校にしました。
全てを自由にする学校選択制は難しかったです。

島根難しいですよね。人口減少にはジレンマがあって、東京都の場合は学校選択制を先駆的にやりましたが、良い学校には必ず高い倍率で皆さんが集まる。
でもそうでない学校には少ない人数しか集まらなくて、いつ廃校になろうかという状況が生まれてしまう。
極論かも知れませんが、完全に廃校になってしまって統合されてしまえば良いのかも知れませんが、その過程がなかなか難しいという印象を持ってしまいます。

橋本それと都内の場合と、完全な過疎地域の学校とは全く違います。
例えば東京都の千代田区で人気がなくて廃校になりそうな学校があってもなんとか・・

島根通える範囲に選択肢がありますね。

橋本そのようにして別の学校を選べるんですけども、これが地方の場合だと、過疎地の町や村にある小学校をなくすことはできません。
自治体単位で言えば、そういった地域すらも学校選択制にして、人気がないからと学校を廃校にしてしまうと一気に地域が寂れてしまいます。
学校がなくなるというのはそれほどの大きな要因なのです。

島根そうですよね。

橋本物事には極限にならないと議論ができないことがあって、人口減少についてもそういったことが多々あります。
しかも私たちのように選挙の結果選ばれて政治をやっていた者からすると、地域のオジサンやオバサンやお爺さんやお婆さんに「なんでうちの学校はちゃんと面倒をみてくれないんだ。なぜ都市部と差をつけるんだ。なぜ潰しちゃうんだ」などと言われると、なかなか答えようが難しいです。
これは選挙で票を入れてくれないと困るというような単純なことではありません。
たしかに全国には学校選択制を是とする首長もいます。
大都市部の中で、教育委員会などが運営をしていく場合には「教育は親御さんがマーケットであって、そのマーケットが反応してくれない運営体なのだから潰れても当然だ」ということで済むのだけれども、地方の場合にはそういったやり方は難しいです。

島根教育バウチャーについても同じことが言えるのではないでしょうか。
市場原理に基づいて、利用者が良いところを選択して、選択されなかったところが淘汰されるのは自然だとは思います。
しかし一方で地方とはどうしても格差が出てしまう。
ではその人々はどうするのか。

橋本今日のテーマとは少し違いますが、介護保険が導入される前に福祉バウチャーについての議論がありました。
介護保険についても、良いところが残り、そうでないところが淘汰される市場原理でやってみたらどうかという議論です。
たしかにそれはおっしゃる通りで、でも、おっしゃる通りなんだけれども、都会だったら私はそれで十分にやっていけると思うしやったらいいと思います。
しかし地方の場合には、全国レベルでみれば都市部よりも質的には低いし、しかしそれそのものが無くなってしまうと拠り所が無くなってしまうという側面があります。
これは都市部の市場原理と地方とは全然違うところで、福祉バウチャーについても教育についても共通項です。
そういった問題は非常に難しいのですが、もうそろそろ真剣な議論をしなければならない時代になっていると思います。

(5)リーダーシップについて

南間次は島根社長にクレドカードについてお伺いします。
島根社長はご自身について「激しいリーダーシップで組織を引っ張っていくタイプではない」と仰っています。
ではどのようにして企業の理念や共感を組織に浸透させているかというと、東急キッズベースキャンプにはクレドカードというものがあると聞きました。
そのクレドカードはスタッフがみんなで一緒に築き上げるもので、定期的に更新していくとのことです。
島根社長は組織におけるリーダーシップについてどのように考えていますでしょうか。
クレドカードも含めてお伺いさせて下さい。

島根私としては逆に橋本先生に色々教えて頂きたいのですが、高知県知事時代はまさに人を動かさなければ物事が動かなかったと思います。
私の狭い経験と仕事の範囲について言いますと、自分一人の能力というのはたかが知れています。
そうするとどれだけ周りの人が動いてくれるか、同じ思いになってくれるかが重要になりますので、理念の共感性ということを特に大切にしています。
私自身、個として優れているとは思っていないので、自分に欠けているところを補ってくれる経営のパートナーを巻き込んできました。
それで、保育や教育の業界は、子どもに対する想いが強い人が集まってきますので、実はお互いにぶつかりやすいんです。
教育に対するちょっとした色々なところで違いが出てきます。
ですからその擦り合わせをしっかりやろうという考え方で、私が作った骨組に対して肉付けする所を、一緒に働く従業員の代表が集まって、みんなでクレドカードを作ってくれています。
そして事業の内容が変わっていくことに伴って3年に一度くらいのスパンで、みんなで集まって更新をしていくという作業をしています。
思い入れの強い人が集まる業界ですので、お互いに喧嘩になりそうな議論になって難しい場面が出てくることもあります。
だけどそんな時はお互いにクレドカードを見て、自分たちが一緒にやろうとしている保育や教育はなんだったのかと立ち返ります。
それが組織を上手く運営できているポイントだろうと思っています。

南間私は20代後半に転職を繰り返したんですけども、中には会社の精神を朝礼で全社員が大声で唱和をする会社もありました。
私自身はそういった雰囲気が苦手だったので、東急キッズベースキャンプのやり方はとても素晴らしいと思います。
橋本先生は島根社長のお話を聞いてどのような感想を持たれましたでしょうか。

橋本今島根さんは、自分は強烈なリーダーシップで引っ張っていくのではなくて、みんなで理念を確認して共感をしてということを仰っていました。
実は私も高知県知事の時代はそういうことを言っておりました。
成人式で一度怒鳴ったことがあるので、とても怒る人だというイメージを世の中に与えてしまったことがあるのですが。
私自身は日常の県庁の中での業務でも、私が教えるのではなく、自分たちで考えながら工夫してやっていくことを推奨して、民間企業のノウハウなども色々と役所のバージョンとして取り入れてやっていました。
しかしそれに対しても「民間企業は利益を上げるのが目的だけれども、自治体は利益をあげるのが目的ではない。民間企業と自治体では目的が違うのに、民間企業で開発された人材育成だとか、組織運営の仕組みだとかを取り入れて何の役に立つんだ」と、殆どの職員に受け止められてしまうところが最初でした。
そのためそこから話をしていくというのはとても大変でした。

南間実際にはどのようなお話を高知県の職員の皆様にされたのですか。

橋本それは、確かに我々自治体は民間企業と違って利益を上げるのが目的ではないけど、税金を頂いて使わせてもらって仕事をしていくのだから、何らかの目標を立てて、その目標を達成するための効率を考えるのは当然でしょうという話からでした。
例えば登山で言えば、目的地という山頂に到達するために3つのルートがあった時、最も無駄なく登れる道を選びましょう。
そしてこのルートは、高知県という自治体の仕事で言えば、最も効率的に無駄なく税金を使って目的に到達できる道なのではないですか。
そもそも役所の体質として「私たちは民間と違って税金を使ってサービスをする仕事だから、いくらお金がかかっても当然だ」という意識でやってきたのではないか。
だから色々な借金の問題だとか、コンプライアンスの問題が発生してしまったのではないですか。
つまり、自治体は利益を上げるのが目的ではないけれども、民間企業で作られた手法を取り入れるということは、効率を考えずに漠然と仕事をしているよりも、モチベーションを持って仕事をしていくことに必ず役立つはずだ。
ということを、時間をかけて言っていきました。
そして各課、各室ごとに課長から新人まで集まって、自分たちで主体的に議論をして頂き、「自分たちの仕事のお客さんは県民なのだ」という意識を持って頂くことを促しました。
もちろんお客様が誰かということは、例えば福祉などの課は分かりやすいです。
でもそうでない県の職場もある訳で、「では自分たちのお客さんは誰で、そのお客様のために目標としてどういうことを達成していくのか。では達成するために自分たちが今、身につけている強みは何で弱みは何か、ではその弱みを克服するためには何をするべきか」について年度目標を立ててやっていくということを始めました。
当然ながらその後も紆余曲折が多々ありました。
しかし結局、自治体の職員の中でもそういった試みをやって良かったという結果が60%くらいまでになりました。
ですからそれなりに効果はあったのだと思います。
具体的に何がどう変わったかというのは、議会で質問をされた際には事例の説明を答えました。
しかしそれはあまり意味のない事であって、自治体の職員一人一人の意識に変化があった、気づきがあったということだけでも、組織全体のチカラとしては大きなものだったと思います。

島根私の場合は創業社長なので、ゼロから築いていく中で、共感する人が参画していったという形だったので割とやりやすかったです。
でも橋本先生の場合は既に出来上がっているところに乗り込んでいって改革する難しさがあったのですね。

橋本ですから、ずっと高知県知事をやっていて、何がどう変わったのかといつも言われるわけです。
その際に「車両が何十台も繋がっている貨物列車が走っていて、方向を変えようとした時に、直進のレールから左のレールに入って、機関車から二両目三両目は直ぐに曲がり始めるけども、最後の何十量目が曲がるのは凄く時間がかかる」と答えていました。
組織もそれと同じようなものなのです。

島根橋本先生が高知県知事を務められたのは4期16年。
本当に凄いですね。それだけ時間をかけて自治体が少しずつ変わってきた。

橋本少しずつ変わってきたし、変わりました。
先程の教員の1年目2年目での社会体験研修なども、どう結果が現れるかというのは、ちょうど今頃に、その世代の人達が教頭なりの立場になってきています。
そうやって今もこれからも変わっていけば良いと思いますし、そのような長期的なスパンでなければ、なかなか行政は変えられない。
一気に結果が出てどうこうというようにはならないというのは実感しました。
そういう中で国家的な規模の問題である少子化に対する対応と言っても、なかなか自治体単位では難しいということも思います。

(6)相対的貧困にある子ども達にも機会を

1)東急キッズベースキャンプのような民間企業のノウハウを公教育に還元できれば

島根今まで橋本先生のお話を聞いていて、私はやってきたことが狭いので、教育に関しましてもお伺いしたいと思います。
公教育の現場に、社会や社会人の経験や視点を軸としたエッセンスを取り入れようとした場合、例えば「民間企業に学校の教師を派遣して見分を積んで頂き、公教育にそのエッセンスを取り入れる」
或いは「短い時間で社会人の方に講師として学校に来て頂き、公教育に社会経験のエッセンスを取り入れる」などの方法があると思います。
しかし現状、指導要領の時間の関係で、そういった余力が現場になさそうな感じがするのですが、橋本先生はどのように思われるでしょうか。

橋本今のご質問の内容として2パターンあります。
ひとつ目は「民間人に校長を任せる」という方法で、これは高知県でもいくつかやりました。
ただ全国的にも、成功事例もあれば、そうでない事例もあってなかなか一概に評価するのは難しいです。
しかし個人的には、全く同じ血でずっとやっていくよりは、長くそういった試みを続けていけば、明らかにいい結果に向かうだろうとは思います。
だけど実際には、その民間の方に校長をやるだけの能力があることが前提になっています。
違う文化の中に入っていって動かしていくだけのリーダーシップと人間力を必要とします。
果たして本当にそれができる人を確実に選べるかどうか、できる人とできない人を見抜いていくことができるかどうか。
そこで人選を間違えてしまった場合、後が大変なことになって「一つの悪例が全てを台無しにする」ということになりかねない。
そこのところの難しさがあります。
ふたつ目の「一般の授業の中に社会人に入ってきて頂く」というのは、学習指導要領の範囲内での授業とは別に、かなりやり易くなってきています。
教育というのは基本的に、教育委員会のマターになっていて、行政は直接口を出せないという形態になります。
それなので理解のある、地域の教育長などを捕まえながらやっていかなければならないのですが、民間の方を入れて授業をしてもらうということは、かなり自由にできるようになってきていますし、私も高知県知事時代には色々やりました。
だけど本来ならば、東急キッズベースキャンプのような、非常に創意工夫に溢れ完成されたプログラムを、公教育の中に落とし込んでいければと思います。
もちろんそれは企業としての大切なノウハウですし、地域の教育委員会、ひいては親御さんも賛成して頂かなければ実現できません。
ただ、もしも実現できていけるならば、東急キッズベースキャンプが企業として蓄えてきたものが、ちょっと違った形で全国の子どもたちに還元していけるなあ、そういうことになってほしいなあと思います。

2)子どもの貧困について

南間橋本先生がそのように考えられるのは何か理由があるのですか。

橋本理由はいろいろあるのですが、そのひとつとして子供の貧困がとても大きな問題だからです。
それは貧しい子どもが可哀そうだという面もあるとは思います。
だけどこれだけ子どもの数が少なくなってきている中で、同じ機会が与えられていれば学力の面からも人間力の面からも、より違った能力を発揮できた子どもが、確実に貧困という枠の中で沈み込んでいってしまうという現状があります。
実際に文部省のやった学力調査でも、親の年収が高い家庭の子どもの方が、親の年収が低い子どもよりも正答率が高くなっていくという、所得階級に連動した相関関係がありました。
もちろん絶対的貧困ではなくて相対的貧困ですけども、相対的貧困の中にあるご家庭は塾に行くこともできません。
そして塾どころか色々な習い事とか、或いは東急キッズベースキャンプのようなところに行って、コミュニケーション能力や人間力を養うこともできない。
その結果、良い教育を受けて良い就職をすることもできなくなるし、就職ができたとしても、人と話す力とか交渉する力とか、そういう色々な基礎的な能力が身についていないということになってしまいます。
だからこそ、そういうことを少しでも減らしていくことが、人口減少社会の中では特に重要なのです。

南間人口減社会に於いては、子どの数を増やすことだけが重要ではないのですね。

橋本子どもの数を増やすことはもちろん必要です。
その一方で、子どもの貧困をどうしていくのかに力を入れることも必要です。
というのも、相対的な貧困の中で、自らの能力を伸ばすチャンスに恵まれない子供が増えることは、人材の活用という点で、これほどもったいないことはないからです。
そこで、せっかく出来上がっている東急キッズベースキャンプのビジネスを邪魔しない形で、公的な教育の中にその仕組みをどうにかして活かせないかを、話し合って模索していくことはできないかと思います。
たしかに教育委員会などの既に確立された組織もありますから難しい面もありますが、市町村の自治体レベルならば、市長なり、教育長なり、地元の親御さんたちなりの中にそれを支持する人たちが出てくれば、かなり変えられるとことはあるだろうと思います。
昨今では子ども食堂だけでなく色々なシステムが増えてきていていますので、なんらかの形で相対的貧困にあるお子さん方にも、そういったプログラムを享受してもらえないでしょうか。
先ほど島根さんが公的支援を受けない理由として、紐が付かないようにということを言われておりました。
そうであるならば、紐が付かない形態での交付金を支給するという仕組みを作っていくことも可能だと思いますし、そうなれば良いなあと思います。

島根我々がそういったことを直接やらさせて頂こうとすると、現状では人材を送り込むことしかできないというジレンマがあります。
現段階では人材育成できる範囲での事業展開しかできていないのですが、実際には23施設が民設民営、28施設が公設民営というように、半分以上公共の事業をやらせて頂いています。
でも現状ではそれが限界で、人が育った分しか世の中に供給させて頂けません。
そういった意味では、テキストを作ったら直ぐに展開できるというビジネスモデルではないのでもどかしさがあります。
我々はいったいどうしたら橋本先生が言われた行為ができるのか。
受託した公設民営の施設では一生懸命に務めさせて頂いております。
そこでは高いコストがかかるプログラムはどうしてもなかなか提供できませんが、コストをかけなくても子どもたちにとって良い教育を工夫して提供させて頂いております。

橋本要はそもそもの問題は、教育とか福祉は専門家の領域なのだという意識です。
たしかに専門性は必要なのですが、それはイコール従来からの専門家の領域であり独壇場だということではありません。
例えば子ども食堂ですが、相対的貧困になっていく子ども達へのアプロ―チを福祉という領域だけでやっていこうとすると、福祉の専門家でなければやれないとか、やってはいけないという意識になってしまう。
しかしそれが、子ども食堂というカテゴリーができたために、相対的貧困になっていく子ども達へのアプローチを誰でもできる、やって良いとなりました。
地域の普通の叔父さん叔母さんお爺ちゃんお婆ちゃんが、子どもたちに食事を作ってあげて、そこに地域の学生が参加して交流が生まれる。
そういった意味で、子ども食堂は世の中の意識を大変わりさせたインフラだと思いますし、最近では放課後の居場所づくり等かなりのインフラが出てきています。
何かそういう形でやっていけることがあるのではないでしょうか。

島根ある意味、我々の事業を真似して頂く仕組みの斡旋ということも考えられるかも知れません。
なかなか矛盾してしまうのですけど、そうするとやはり先程のバウチャーのような仕組みで、所得が少ないご家庭にそういった再配分をできるような仕組みになると良いかも知れないと思います。

橋本公の難しいところは基準を設定しなければならないところです。
それなのでそういったバウチャーの基準として、使用する人の所得水準の基準を作ること。
これは役所仕事としてはボリュームがあるけれど作れると思います。
ただ、その出口のサービスとしては、これは本当に使えるバウチャーだということを決めるのは難しいかもしれません。
と、申しますのは、世の中というものはそういったバウチャーが出てくれば、色々な方々が私たちにも使えるようにと言ってきて、そういう方々が政治家に是非私どもにも使えるようにと言って、なにか団体を作りましょうと言って、その政治家を顧問にするというようなことやっていく。
まあ社会はそうやって成り立っているということもあります。
ですから結局、そういった諸々を含めて、少子化は今すぐに止まるかというと止まりようがなくて、冒頭に言いましたように、国のお金の使い方を変えない限りは難しいです。

島根おっしゃる通りですね。

南間国のお金の使い方ということで言いますと、フランスは国家的に子育て支援をした結果、劇的に合計特殊出生率が改善しました。
特に日本と異なるのは就学前教育制度で、母親の就労の有無に関わらず、公教育制度が保育機能を併せ持つ点で、2歳からの公教育体制が事実上整っています。
この就学前教育の拡充に比例して、女性の年齢別就労率のM字カーブが解消されました。
また、公的保育分野では認可保育園や保育ママなどの制度の充実により、子どもの保育について難事ではなく解決できる問題だと捉えられています。

橋本そのようにお金の使い方を国家的規模で変える取り組みがなければ、出生率の改善は難しいのです。
だから日本はどうするのか。
そのことと共に大事なのが、こういう少子社会になってしまった中で、目に見えない相対的貧困の格差により、大きな学力の差や、社会的能力の差が出ないようにあらゆる仕組みを使っていくことなのです。

(7)外国人の受け入れ

橋本もうひとつ大切なのは外国人の受け入れです。
先日のラグビーワールドカップでの日本代表のワンチームは本当に良い事例でした。
あのワンチームを見て、最初は「なんでこのチームが日本代表なんだろう」と思った人は多いと思います。
だけど決勝トーナメントに進んだ頃には、みんな「このチームが私たちの日本代表なんだ」という気持ちになっていました。
そして視聴率でも42%という驚異的な数字になった。
リーチ・マイケル主将にしても流暢な日本語を話していて、私は今回のラグビー日本代表が、スポーツの分野に留まらない、これからの日本の地域社会の象徴でもあると思います。

島根外国人の受け入れに関しては、移民とは言わないと安倍首相は言っていますが、実質的には既に移民の受け入れになっている現状だと思います。
でもそれは今のスピードでは全然間に合っていません。
既に様々な制度上の制約が付いてきてしまって、アジアの国々との労働力獲得競争は後手に回ってしまいました。
でも本来、外国人を受け入れるということは制度の問題だけではなくて、それぞれの地域の中で色々な問題が出てくるということを、地域の住民も理解して受け入れていく必要があるということだと思います。
でも、それでも、或いはAIがどれほど発達しても、どう考えても労働力人口は足りない気がします。

南間もしも今すぐに日本の人口が回復に向かい始めたとしても、出生率に現れるまでには30年かかると言われています。

島根現状は出生数の減少が続いているので、出産適齢期の女性の人口も年々減り続けています。
そういう現在の状況から、合計特殊出生率が2.0を超える状況になっても、子どもを産む女性の平均を30才と設定すれば30年かかることになります。
そうすると政策的に、今お子さんを生んでくれているご家庭に支援をするのか、或いは結婚が今少ないので、結婚をもっと早くしてもらうのか、色々な政策があると思います。
ただ、私は100兆あるようなこの国の予算の中で、もっと少子化対策に本腰を入れて予算を投じても良いと思うのです。
私は素人ですし、よく分からなくて乱暴な言い方になってしまうかも知れないのですが、30年後には生まれた子どもたちが労働者として、消費者として、納税者として国を支えていくのですから、30年国債を乱発してでも、現在富をもっていらっしゃる高齢の方に国債を買って頂いて、そうしたら例えば相続の時に税金が有利になるとか、なんらかのカタチでの国を挙げての少子化克服のための支援が必要だと思います。
もう、少子化の流れは、よほど大きなお金を投下しない限りはなかなか克服できないのではないでしょうか。

橋本本当におっしゃる通りです。
私は地方で講演をする機会が多々あって、先日も新潟に行って話をしました。
そうしましたら湯沢の温泉地の旅館では既に日本人の従業員が来なくなってきていると聞きました。
もう殆ど外国人でやっているという話をしていましたし、自動車関連の協会に行って講演をした時にも、自動車販売のリーダーのところにも全然日本人の社員がこなくて、外国人の活躍の場が増えてきているとのことです。
それは農業など他の業界でも同じで、今日本では様々な業界で外国人の方が増えてきています。
こういう状態の中で、現実には今すぐにでも外国人の方の手を借りなければ、これから物事が動かなくなっていくということがあります。
そこで外国人を受け入れる地域の難しさということもあると思いますが、一方で外国人の受け入れについて既に長年の経験をもっている自治体もあります。
静岡県の浜松市は1988年にブラジル人の方々が約30人いました。
それが20年後の2008年には約20,000人に増加して、そして今、ブラジル人を含む外国人の方々が約24,000人います。

南間なぜ浜松市では外国人の方々が増えているのでしょう。

橋本それは浜松市では当初から、福祉・教育・医療・住宅など色々な相談に応じながら受け入れてきているということがあります。
その中でも肝心であり、同時に難しいのは教育なのですが、当然のことながら外国から来た人にも教育を受ける権利はあるわけです。
しかし一方で、外国から来た人には、憲法に於ける教育を受けさせられる義務がないので、結局親は子どもが地域の学校に行って苛められたりした場合に、もう家にいた方が安心だ、教育を受けさせないとなってしまう。
そこで先生たちが学校に通うようにチームを作ったりしながら、ずっとやってきているわけです。
それをやらなければ、当初のドイツのトルコ人移民もそうだったように、地域社会に結局馴染めないまま2世や3世が誕生することになってしまう。
日本は既に労働力が全く足りていなくて、これから増々足りなくなっていきます。
そういった中でこれから実質的な移民を受け入れるということになっていく。
だからこそ、外国人の方が地域社会に溶け込めないという事例を起こさせないことが必要です。
そのために今から手を打っていけば、必ず2世・3世の方々の頃には大きく変わっていくはずです。

島根私は外国人の受け入れには二重の効果があると思います。
移民の方はアメリカの事例でもフランスの事例でも、子どもを沢山産んでくださる傾向があります。

橋本今は日本人の方々も、だんだん直ぐ近くに外国人の方々が多数おられるようになったという印象を持っていて、それが自然なことになってきています。
それこそスポーツで言えば、八村塁さん、サニブラウン・アブデル・ハキームさん、大坂なおみさん、ダルビッシュ有さんなど、皆さんお父さんは中東やアフリカなど外国から来られた方です。
そういった方々が子ども達の憧れの対象になっていて、日本人の誰もそこに違和感を持ちません。
先日、たまたま病院に行ったら会計の人が外国の女性で流暢な日本語を話されていました。
見ていると他のスタッフの方とも全く違和感なく仕事をされていたので、そういうことから言っても時代の空気は変わりつつあります。

南間冒頭での島根社長のお話にありましたが、最近街でベビ-カーを押しているお父様が以前よりも多くなったという気がします。
こういった街の景色も、時代の空気が変わってきているということだと思います。

島根そうですね。皆様堂々とベビーカーを押されていますよね。
弊社が受託している公的な学童保育の中では、新宿区の高田馬場の地域に2か所運営をしています。
その地域ではもともとの住人の方々が、アジア地域から来られた方々が多いんです。
それなのでお父様お母様がアジアの方だというご子息が高田馬場はおられるので、なんとなく橋本先生が言われた浜松のような、日本の未来社会のような気がします。
また、そういったご家庭ではお父様お母様が日本語をあまり上手に話せなくても、お子さんは流暢に話せるんです。

(8)今後の東急キッズベースキャンプの事業展開

南間それでは最後に、今後の東急キッズベースキャンプの事業展開についてお伺いします。
これから東急キッズベースキャンプには今よりも様々なニーズがでてくると思います。
また、マーケットがあると分かれば沢山の企業が新規参入してきます。
最近では学習塾やスポーツクラブ、または他の電鉄グループもアフタースクール分野に参入してきました。
そういった中で、まさにリーディングカンパニーである東急キッズベースキャンプは、これからどのような事業展開をされていくのでしょうか。

島根事業展開はなかなか先のことまで設定していくのは難しいのですが、まず一つ目としては、公的サービスをもっと広げていきたいです。
これは各自治体のコンペに出ていって、そこで我々なりの提案をさせて頂くというプロポーザル方式です。
そこで我々のプレゼンテーションが採択されれば貢献をさせて頂くことになります。
二つ目の民間事業としての展開につきましてはマーケットありきですが、実際には一定の高所得者の方々が住んでいる地域はそれほど多くはないので、拡大のペースは緩やかになると思います。
三つ目に、もしも先ほど橋本先生が言われたような、公教育の中でやるものに我々が貢献させて頂くことができるのであれば、参入を検討していくことはあると思います。
ただ、世の中にそういう動きが全くない中で、我々が提案をしたからと言って直ぐに動けるかどうかは分からないので、二の足を踏んでしまう部分はあります。
四つ目は教育の中身です。
これに関しましては、まだまだやってみたい教育が沢山あります。
例えば現在、東急キッズベースキャンプでは「インフィニティ」という国際教育の業態もやっています。
この教育はまさに、これから日本に様々な人種の方々が増えていった時に本当に役に立つと思います。
我々の国際教育とは単純に英語ができる人材を育てるということではありません。
インフィニティのコンセプトは、国際社会の中で自分の個性を活かして、自分の人生を切り拓いていく人材を育てるというものです。
そのためにプログラムのひとつである「グローバルリーダーズ」では、様々な分野で活躍をしている日本人の方にお越しいただいて、小学生の頃から自分の道を切り開いてきた物語を子ども達に語って頂いています。
また、「グローバルイシューズ」というプログラムでは、時事問題を小学生がみんなで一緒に考えて議論しています。
子ども達がみんなで考えお互いの意見を発表して、「たとえば?」「なぜそう思うの?」など、子どもたちが深く考える時間を与えられながら議論を進めていきます。
例えばアメリカの大統領選挙の時には、民主党と共和党の赤と青のプラカードをひっくり返しながら、小さな政府が良いのか大きな政府が良いのか、または銃規制はどうすれば良いのか等について、小学生なりに理由を考えて一生懸命に議論をします。
子ども達にとってはニュースで見聞きしたものも社会の一部ですので、それを議論の中で理解した子ども達は家に帰っても家族に話したくなる。
すると家庭内でも、小学生の子どもには難しいと思っていた会話が生まれてきます。
また、国際教育として忘れてはならないのは日本人としてのアイデンティティです。
外国に出ていくと、どこの国にも日本通の外国人の方が必ずいらして、伝統文化をあまり知らない自分は恥ずかしいと思うことが時々あります。
「ハローNIPPON」というプログラムは、そういうことを体験型で、もしも日本にも外国の方が増えてきたり、或いは自分が外国に出て行ったりした時に、日本人として日本のことを語れる大人になってほしいという想いで始めました。
子ども達に世界に誇れる和の文化について知識を身に付けてもらい、日本人としてのアイデンティティを確立し、将来世界に向けて発信する原動力を育んでもらえればと思います。

南間日本人としてのアイデンティティについて言うと、日本の伝統文化は知っているようで知らないことも沢山ありますね。

島根そういった意味では、我々サービスを提供する側も一生懸命に勉強し直して、子ども達に体験をしてもらっています。

橋本島根さんが今言われたグローバルイシューズというプログラムについてですが、小学生がアメリカ大統領選挙について議論をして、健康保険をどうするかまでは議論しなくても、最終的には民主党支持と共和党支持のどちらの支持が多いのですか。

島根グローバルイシューズは「正解がなくて良い」という考え方に立脚しています。
そのため途中で意見を変えて良いのです。
誰々ちゃんが言った意見が一理あると思ったから、途中で反対から賛成に意見が変わった。
或いは賛成から反対に意見が変わった。
そうやって世の中には常に多様性があり、みんな違うということが凄く大切だと私は思っています。
世の中には様々な人がいることが当たり前で、それをお互いに認め合って生きていくのが多様性の時代だと思います。
だから子ども達も議論をしながら常に悩みます。正解がないから悩む。
そのようにして子ども達自身で悩むことが大切なのです。
そして議論の中で意見が変わっていく。
途中で意見が変わることは、とても素敵なことだと私は思います。
このようにインフィニティでは、子どもたち一人一人が多様な視点に気づき、より広い視野で世界を見渡せるようになることを目指した国際教育をしています。

南間橋本先生は今までの島根社長のお話を聞いて、どのようなご感想を持たれましたか。

橋本感想としましては、本当に素晴らしい活動だと思います。
小学生の子ども達が「議論の中で意見を変えて良い」という教育を受けていることについて言うと、たぶん私たちの世代は子どもの頃に、一度もそのようなことを体験していないと思います。
私たちの世代が学生の頃に体験したディベートといえば、最初にテーマがあって白と黒に分かれて討論をするという既存の形式でした。
そのため今の島根さんのお話を聞いて、どういう考え方でも良いという発想で議論がスタートして、そして途中で意見を変えても良いという教育は重要だと思いました。
子ども達にとって、とても良い教育です。

南間本日は少子化をテーマに、橋本大二郎先生と島根太郎社長にお話をお伺いしました。
さて、東急キッズベースキャンプは現在、子育て中のご家庭をマーケットにされていますが、これから増々世の中に東急キッズベースキャンプが必要になっていく要因が現れてきます。
私はそれが高齢化だと思います。
私事なのですが、最近親父が癌になり車椅子を使うようになりました。
ただ、私たち親子は運が良くて、親父も回復が著しく仕事に復帰しています。
でも、もしも自分が独身ではなく、家庭があって子どもがいたらどうだろうと考えます。
そうするとどうしても子どもを預けられるところが必要になってくると思います。
これから私を含む団塊ジュニア世代による親の介護が始まっていくことも、子どもを預けなければならない要因になっていくでしょうし、これから社会にそういう事例が増えていくと思われます。
そういった意味でも、東急キッズベースキャンプにはこれから増々のご発展をお願いしたいと思いました。
本日は橋本先生と島根社長から貴重なお話をお伺いできました。
本日はありがとうございました。

 

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